スマホやEVに影響も?
中国が日本企業20社に輸出禁止した「本当の意味」
「三菱重工」「川崎重工」が規制対象というニュース、一見すると「防衛産業の話だから自分には関係ない」と思いませんでしたか。でも実は、あなたのスマートフォンや電気自動車が将来値上がりするかもしれない話と直結しています。スマホ1台にはレアアースが約1g前後含まれており(業界推計)、その約60%は中国産です(米地質調査所USGS 2024年推計)。
今回の規制の本質は、レアアース問題でも防衛産業だけの問題でもありません。安全保障を名目にした「軍民両用品の輸出規制」です。この軸を押さえることで、なぜスバルやENEOSまで対象になるのか、なぜ私たちの生活にも関係するのかが見えてきます。
本記事の内容は2026年2月24日時点の公式発表・報道に基づきます。規制対象品目の詳細は現時点で中国政府から公表されておらず、追加措置が発表される可能性があります。
(防衛関連企業が中心)
(スバル・ENEOSなど)
輸出禁止が発動
ここに至るまでの流れ—3つのステップで整理
今回の規制は突然起きたことではありません。約2か月にわたる段階的な緊張の積み重ねがあります。
今回の規制の本質—「軍民両用品」とは何か
この規制はレアアース問題ではなく、安全保障を名目にした軍民両用品(デュアルユース品)の輸出規制です。レアアースはその規制対象に含まれる素材の一例に過ぎません。まずこの点を押さえることが、記事全体を理解する鍵になります。
包丁は料理(民間用途)にも使いますが、武器(軍事用途)にもなり得ます。だから空港では持ち込みが制限されますよね。今回の「レアアース」も同じ考え方です。スマホのスピーカーや電気自動車のモーターを動かす磁石の材料になる一方、ミサイルの誘導装置や戦闘機のエンジン部品にも欠かせません。中国は「料理に使うと言っても、本当は武器に転用するんでしょ?」と疑っている状態なのです。
規制の対象となる素材—レアアースと私たちの生活
レアアース(希土類)は17種類の希少金属の総称で、日常生活のあちこちに使われています。スマートフォン1台には合計で約1g前後のレアアースが使われており(業界推計)、バイブレーション機能・スピーカーの磁石(ネオジム)、カメラのレンズ調整モーター(ジスプロシウム)など複数の部品に組み込まれています。電気自動車の駆動モーターはさらに多くを使用します。
中国は世界のレアアース生産量の約60%を占めており(米地質調査所 2024年推計)、日本はその大部分を中国からの輸入に頼ってきました。
中国側の主張と日本政府の立場
中国商務省は「日本の再軍備と核保有の企てを阻止するものであり、完全に正当で合理的で合法だ」と主張しています。一方、佐藤啓官房副長官は「決して許容できず、極めて遺憾だ」と強く批判し、政府として撤回を要求。外務省の金井正彰アジア大洋州局長も在日中国大使館に直接抗議しています。
データで見るレアアースの現状
規制の背景にある中国依存の実態を、データで確認します。
出典:米地質調査所(USGS)2024年推計
※バーの長さは相対的なイメージです
なぜスバルやENEOSも対象に?—禁輸リストと監視リスト
防衛関連企業が対象になるのはわかるとしても、スバルやENEOS・TDKといった一般的な企業が含まれているのはなぜでしょうか。軍民両用品の規制だからこそ、民間企業も射程に入るのです。
| 区分 | 主な対象企業・団体 ※主要報道各社のリストに基づく。公的な完全リストは未公表 | 注目ポイント |
|---|---|---|
| 完全禁輸 | 三菱造船、三菱重工航空エンジン、川崎重工業航空宇宙システム、IHI原動機、IHIエアロスペース、NECネットワーク・センサ、ジャパンマリンユナイテッド、防衛大学校、JAXA ほか計20社・団体 | 航空・船舶・宇宙分野が中心。政府系研究機関まで含まれる点が異例 |
| 審査強化 | SUBARU(スバル)、日野自動車、ENEOS、TDK、三菱マテリアル、東京科学大学 ほか計20社・団体 | 民間大手も対象。「なぜ?」と思う企業名が並ぶ |
「なぜスバルやENEOS・TDKが?」を解説
SUBARU(スバル)は乗用車メーカーとして有名ですが、航空機部品の製造も手がけており、自衛隊向けの航空機エンジン・機体部品の生産にも関わっています。民間と防衛の両面に関与しているため対象になりました。
ENEOSは石油元売りですが、精密機器や装備品に使われる特殊な潤滑油・作動油を製造しています。TDKの電子部品(磁気センサーや電子フィルターなど)はミサイルの誘導システムや通信機器への転用が想定されるとみられます。
「審査強化」は「完全禁輸」ほどの強さではありませんが、中国への輸出のたびに個別許可審査が必要になり、取引コストと不確実性が大きく増します。
JAXAが含まれる意味
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の名前が入っているのは注目点です。ロケット技術は性質上ミサイル技術と表裏一体であり、中国側が「日本の宇宙・技術開発そのものを制約したい」という意図を持っていると読む専門家もいます。
私たちの生活への影響—短期・中期・長期で考える
軍民両用品の輸出規制は、防衛産業にとどまらず、やがて一般消費者の生活コストにも波及します。規制の影響は一度には現れず、時間軸に沿って段階的に広がっていきます。
対象企業の業績への不透明感が増します。一般消費者の生活への直接影響は現時点では限定的です。
代替調達コストがメーカーの製造費用を押し上げ、電気自動車や家電の価格に少しずつ反映される可能性があります。
「脱中国サプライチェーン」が加速し、調達コストは上がる一方で、安定した供給体制が整う可能性があります。
「また同じことが?」—2010年との違いを比較する
2010年の日中漁船衝突事件の際、中国の対日レアアース輸出が事実上ストップし、当時の日本産業は大きく動揺しました。では今回はどう違うのでしょうか。
| 比較項目 | 2010年(漁船衝突事件時) | 2026年(今回) |
|---|---|---|
| 中国への依存度 | 約90%以上(ほぼ独占) | 約60%(依然高いが低下) |
| 代替調達先 | ほぼなし。各国も対応策なし | 確保が進む オーストラリア・カナダ・ベトナム産が拡大 |
| リサイクル技術 | ほぼ未発達 | 向上 使用済み製品からの再利用が一部実用化 |
| 国家備蓄 | 不十分。即座に影響が出た | 国家備蓄制度あり。短期的には対応可能 |
| 全体的な打撃 | 深刻 産業がほぼパニック状態に | 中程度 当時ほど絶望的ではないがコスト増は避けられない |
2010年以降の16年間で、日本は中国レアアースへの依存度を着実に下げてきました。とはいえ依然として約60%は中国産であり、代替先への完全移行にはさらに時間とコストがかかります。「当時ほど絶望的ではないが、コスト増は避けられない」というのが現状の正直な評価です。
- Q. 軍民両用品とレアアースはどう違う? — 軍民両用品(デュアルユース品)が今回の規制対象の総称で、レアアースはその中に含まれる素材の一例です。化学品・電子部品など幅広い品目が対象になり得ます。
- Q. 今すぐスマホや車に影響はある? — 今すぐ大きな影響はありません。メーカーには在庫・備蓄があります。ただし規制が長期化するとコストが上がり、将来の製品価格へ転嫁される可能性があります。
- Q. 今、スマホやEVを買い替えるべき? — 短期的な影響は限定的なため、規制を理由に急いで買う必要はありません。状況を注視しながら通常どおりの判断で問題ありません。
- Q. 日本政府はどう対応した? — 佐藤啓官房副長官が「決して許容できず、極めて遺憾」と声明。外務省の金井正彰アジア大洋州局長が在日中国大使館に強く抗議し、措置の撤回を求めました。
- Q. 第三国を経由して輸入できないの? — 中国は第三国(アメリカ・欧州など)を経由した「迂回輸出」も禁止しています。完全な回避は難しい状況です。
- Q. レアアースって何? — ネオジムやジスプロシウムなど17種類の希少金属の総称。電気自動車・スマホ・風力発電の核心部品に使われ、中国が世界生産の約60%を占めます。
- Q. 三菱重工などの株価への影響は? — 防衛関連銘柄は規制強化の影響で変動が見込まれますが、日本の防衛予算拡充という国内要因もあり株価への影響は複合的です。最新情報は証券各社のサイトでご確認ください。
1. 「経済的威圧」という外交カード — 軍事行動ではなく資源規制で圧力をかける手法は、中国が過去にも繰り返し使ってきた戦術です。2010年のレアアース停止、2020年のオーストラリアへの貿易制限なども同様の文脈で理解できます。
2. サプライチェーンのもろさが再び浮き彫りに — 「安くて品質が高い」という理由で中国産レアアースへの依存が続いてきましたが、今回の規制は「安さよりも安定した調達」を優先すべき時代の到来を示しています。その代償は私たちが製品価格という形で支払うことになるかもしれません。
3. 対象が「大学・研究機関」にまで及ぶ意味 — JAXAや防衛大学校の掲載は、純粋な経済圧力を超えて日本の技術・研究開発能力そのものを封じ込めようとする意図の表れと読む専門家もいます。
- 中国政府が規制対象品目の具体的リストを公表するかどうか(現時点では未公表)
- 高市首相が国会答弁の内容を修正・撤回するか、または維持するか
- 日本政府がレアアース調達先の多角化政策を具体的に発表するか
- 「監視リスト」企業(スバル・ENEOSなど)への輸出審査がどの程度厳しくなるか
- G7諸国や米国が日本支持の立場を鮮明にするかどうか
まとめ
今回の規制の本質は、レアアース問題でも防衛産業だけの問題でもなく、安全保障を名目にした軍民両用品の輸出規制です。その射程は防衛企業から民間メーカー・研究機関まで広く及び、日本の産業・外交・日常生活が複雑に絡み合っています。
2010年の教訓から日本は着実に準備を進めてきましたが、それでも完全には抜け出せていない中国依存の現実が改めて浮き彫りになりました。「安さ」よりも「安定した調達」を優先する代償を、私たちは製品価格という形で支払う時期に来ているのかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。↓↓のバナーをクリックして応援いただけると嬉しいです。













