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中国軍機のレーダー照射とは?|防衛省発表で読み解くFCR・危険性・国際法

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戦闘機のレーダー照射とは?中国軍機による照射事案を解説

戦闘機のレーダー照射とは?
中国軍機による照射事案を解説

2025年12月7日

速報:中国軍機が自衛隊機にレーダー照射

2025年12月6日、中国海軍の空母「遼寧」から発艦したJ-15戦闘機が、沖縄本島南東の公海上空で対領空侵犯措置(スクランブル)に当たっていた航空自衛隊のF-15戦闘機に対し、火器管制レーダー(FCR: Fire Control Radar)による照射を2回にわたって断続的に行いました。

照射の時系列:

• 1回目:16時32分~35分頃(対象:F-15戦闘機1機)
• 2回目:18時37分~19時08分頃(対象:別のF-15戦闘機1機)

防衛省の公式発表によれば、空自機のレーダー警報受信機(RWR: Radar Warning Receiver)が「攻撃レーダー照射」を検知しました。高市総理は「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える極めて危険な行為」とコメントし、外務次官が中国大使を呼び強く抗議するとともに、再発防止を厳重に申し入れました。

(出典:防衛省公式発表、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞、TBS NEWS DIG 2025年12月7日報道)

レーダー照射とはどのような行為か

レーダー照射とは、戦闘機や艦艇が搭載する火器管制レーダー(FCR: Fire Control Radar)を用いて、特定の目標に電波を集中的かつ継続的に当て続ける行為です。単に目標を探知する行為とは根本的に異なります。

FCRは、ミサイルなどの兵器を発射し確実に命中させるために必要な発射諸元(Firing Solution: 距離、速度、角度、弾道計算データ)を算出することを目的としたシステムです。照射を受けた側の戦闘機には、レーダー警報受信機(RWR: Radar Warning Receiver)が「攻撃レーダーからの照射」として警告を発し、パイロットは即座に攻撃準備を受けていると判断します。

レーダー照射の目的

レーダー照射には技術的な目的と戦略的な目的があります。

技術的目的:搭載ミサイルや機関砲が命中できるように、目標の距離、速度、方向、加速度などを極めて高い精度で連続的に測定します。これはミサイル誘導シーケンスの一部であり、いつでも発射できる状態を作り出すことを意味します。

戦略的目的:相手に「これ以上接近すると攻撃する」という強い威嚇や退去要求として使われることがあります。また、相手の反応をテストする挑発行為としても用いられます。

どのような原理で機能するのか

レーダー照射は二段階のプロセスで行われます。

まず、捜索・探知レーダーが広範囲を捜索して目標を発見し、概ねの位置情報を特定します。この段階では目標機は単に探知されているという警報を受け取るだけです。

次に、火器管制レーダーがビーム幅を極端に絞り込み、高出力で目標に電波を集中的に照射します。これにより、目標までの正確な距離や角度、その変化率を極めて高い精度で測定し続けます。この状態が「ロックオン」と呼ばれ、目標機側には攻撃レーダーからの照射として警告されます。

FCRの技術的特徴

火器管制レーダーは、主にXバンド(8~12 GHz)またはKuバンド(12~18 GHz)の周波数帯域を使用します。これらの高周波数帯は、波長が短く指向性が高いため、狭いビーム幅で精密な追尾が可能です。

典型的なFCRの特性は以下の通りです:

ビーム幅:1~3度(捜索レーダーの10~30度と比較して極めて狭い)

出力:数十~数百キロワット(集中的な高出力照射)

追尾精度:距離±数メートル、角度±0.1度以下

更新レート:秒間数十回のデータ更新(連続追尾)

この高精度データにより、ミサイル誘導システムは目標の未来位置を予測し、最適な迎撃コースを計算します。特にセミアクティブ・レーダー誘導ミサイル(SARH)では、発射後もFCRが目標を照射し続ける必要があり、照射の継続時間が長いほど攻撃意図が明確と判断されます。

レーダー照射は危険な行為なのか

はい、極めて危険な行為です。レーダー照射は敵対行為の意思表示と見なされます。

軍事的には、レーダー照射は「我々はあなたを兵器で破壊する準備が完了した」という意思を相手に伝える行為です。照射を受けた側は、ロックオンを回避するため、または先制防御のために対抗措置を行う可能性があり、これが武力衝突へ発展する危険性があります。

実際、高市総理も「航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為」と述べており、各国政府は強く抗議する慣例があります。歴史的にも、誤認から戦闘が始まった例があるほど、暴発リスクが高い行為とされています。

攻撃されていることと同様なのか

法的には「攻撃」そのものではありませんが、軍事・政治的には「最終警告」であり、攻撃の直前にある極めて重大な威嚇行為です。

実際に弾薬を発射していないため、国際法上「武力攻撃」として反撃権を即座に正当化する行為とまでは一般的に見なされません。しかし、軍事的な実態としては、いつでも発射可能な状態であり、「これ以上動けば撃つ」という明白な意思の伝達です。

国際法上、火器管制レーダーの照射は「挑発行為」として位置づけられており、国連憲章第2条第4項でいう「武力による威嚇」に該当する可能性が高いとされています。海上衝突回避規範(CUES)では、FCR照射は「攻撃の模擬」として明確に禁止されています。CUESは国際海上衝突予防規則(COLREG)の航行安全の精神を軍事的な不測の接触場面に拡張したもので、2014年に西太平洋海軍シンポジウム(WPNS)で採択されました。

現場のパイロットからすると「いつミサイルが発射されてもおかしくない状況」であり、回避行動や電子戦対処を開始するレベルの非常事態です。偶発的な衝突を引き起こす最も危険な行為の一つと見なされています。

過去の類似事案:

2013年1月、東シナ海で中国海軍艦艇が海上自衛隊の護衛艦とヘリコプターに対して火器管制レーダーを照射した事案が発生し、日本政府は「極めて危険な行為」として強く抗議しました。この事案は国際社会にも大きな波紋を広げ、FCR照射の危険性が広く認識されるきっかけとなりました。

今回の事案について

今回の照射事案において、中国側は「事実と異なる」と反論し、「中国側は事前に訓練海域・空域を公表していた」「自衛隊機が何度も訓練海域に接近し妨害行為を行った」と主張しています。しかし、日本政府はこれを否定し、中国側の主張を「正当化のための言い訳」と見なしています。

日本政府は外務次官が中国大使を呼び強く抗議するとともに、再発防止を厳重に申し入れました。また、米国をはじめとする同盟国も中国側の行動を懸念する声明を出しており、国際社会からも「極めて危険な挑発行為」との批判が高まっています。

このような事案は、偶発的な軍事衝突につながる危険性があり、地域の安全保障に重大な影響を及ぼす可能性があります。両国間の冷静かつ毅然とした対応が求められるとともに、CUESなどの国際規範の遵守が改めて重要視されています。

出典一覧

一次資料:

• 防衛省公式発表「中国海軍艦載機による火器管制レーダーの照射について」(2025年12月7日)

• 国連憲章 第2条第4項「武力による威嚇又は武力の行使の禁止」

• Western Pacific Naval Symposium (WPNS)「Code for Unplanned Encounters at Sea (CUES)」(2014年採択)

報道機関:

• 日本経済新聞「中国軍機、自衛隊機にレーダー照射 沖縄南東の公海上空」(2025年12月7日)

• 毎日新聞「中国軍機が自衛隊機にレーダー照射 防衛省発表」(2025年12月7日)

• 読売新聞「中国軍機、空自機にレーダー照射…高市首相『極めて残念』」(2025年12月7日)

• TBS NEWS DIG「高市総理『極めて残念』中国側に強く抗議」(2025年12月7日 16:41配信)

• 時事通信「外務次官が中国大使に抗議 レーダー照射」(2025年12月7日 20:03配信)

参考事案:

• 防衛省「中国海軍艦艇による火器管制レーダーの照射事案について」(2013年1月30日・2月5日事案、同年2月5日発表)

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