がん5年生存率から見える現実と希望
「がんと診断されたら、あとどのくらい生きられるのだろう」誰もが一度は考える不安です。2026年1月、厚生労働省が全国がん登録として初めての5年相対生存率(2016年診断例)を発表しました。
前立腺がんでは92.1パーセント、一方で膵臓がんは11.8パーセント。同じ「がん」という病気でも、発生する部位によってこれほど大きな差があるという現実が、数字として明らかになりました。
この記事では、最新データから見える希望と課題、そして私たちができることを、わかりやすくお伝えします。
出典:厚生労働省「2016年 全国がん登録 生存率報告」
2016年に診断された患者のデータであり、現在の医療技術はさらに進歩しています。また、ここで示す生存率は「相対生存率」で、がん以外の死因による影響を除いた数値です。個人の予後は年齢、健康状態、治療法によって大きく異なるため、数字だけで判断しないことが重要です。
2016年がん診断患者の5年生存率データ
厚生労働省が公表した全国がん登録の初めての集計結果は、約99万人の患者データに基づいています。これは日本で診断されたほぼすべてのがん患者を含む、非常に信頼性の高いデータです。
(最も高い生存率)
(女性に多い)
(最も厳しい数値)
主要ながん種別の5年生存率
| がんの部位 | 5年生存率 | 患者数(2016年) |
|---|---|---|
| 前立腺 | 92.1% | 約8万9千人 |
| 乳房 | 88.0% | 約9万7千人 |
| 子宮頸部 | 71.8% | 約1万1千人 |
| 大腸 | 67.8% | 約15万9千人 |
| 胃 | 64.0% | 約13万3千人 |
| 肺 | 37.7% | 約12万4千人 |
| 肝臓 | 33.4% | 約3万8千人 |
| 膵臓 | 11.8% | 約3万9千人 |
生存率に大きな差が生まれる理由
早期発見の難しさが命運を分ける
膵臓がんや肝臓がんの生存率が低い最大の理由は、早期発見が極めて難しいという点にあります。膵臓は胃の奥深く、背骨の前に位置する臓器で、体型や腸管ガスの状態により、腹部超音波検査で全体を完全に観察することが限定的です。臨床研究では、2cm以下の小さな腫瘍の検出感度は50から60パーセント程度とされています(日本消化器病学会「膵癌診療ガイドライン」等)。
実際に、膵臓がん患者の約半数は診断時にすでにステージ4という進行した状態で発見されています。一方、胸部レントゲンで発見しにくい肺がんも同様の課題を抱えており、リスクがある場合は定期的なCT検査の検討が重要です。
肺がんの場合、胸部レントゲンでは早期発見が困難なケースが多く、CTスキャンによって初めて小さな病変が発見されることも少なくありません。特に小細胞肺がんは進行が速いため、定期的な画像検査の重要性が強調されています。
症状の現れ方の違い
前立腺がんや乳がんは、比較的早い段階で何らかの症状やサインが現れることがあります。乳がんであればしこりに気づく、前立腺がんであれば排尿の変化を感じるなど、自覚症状につながりやすい特徴があります。
しかし膵臓がんは初期症状がほとんどありません。背中の痛みや体重減少といった症状が出る頃には、既に進行していることが多いのです。
医療の進歩がもたらす希望
治療法の飛躍的な発展
20年前と比較すると、がん治療は目覚ましい進歩を遂げています。免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬といった新しい治療法が次々と登場し、かつては厳しかったがんでも長期生存が可能になってきました。
実際に、1980年代まで極めて予後が悪いとされていた白血病などの血液がんは、分子標的薬の登場により5年生存率が大幅に改善しました。医療技術の進歩は着実に患者の予後を改善しています。
小児がんの成績向上
厚生労働省の同報告によれば、15歳未満の小児がんにおいても5年生存率が公表されています。白血病・リンパ増殖性疾患・骨髄異形成疾患では82.2パーセント、神経芽腫・その他類縁疾患では78.5パーセントと、小児がん治療の進歩は特に顕著です。リンパ腫・リンパ網内系腫瘍では95.7パーセントと極めて高い生存率を示しています。
臨床データによれば、小児がんや若年層のがんにおいて、早期発見が予後に大きく影響することが示されています。定期的な健康管理と異常の早期発見が、治療成功の鍵となります。
私たちができる早期発見への取り組み
効果的な検診
対策型がん検診の活用
市区町村が実施するがん検診を、推奨年齢・頻度(胃がん・大腸がんは原則2年に1回など)に沿って受診しましょう。
精密検査を躊躇しない
異常が見つかったら、必ず精密検査を受けることが重要です。
女性特有のがん検診
乳がん検診(マンモグラフィ)と子宮頸がん検診は2年に1回が推奨されています。
注意すべきサイン
体重の急激な減少
理由なく体重が減少する場合は要注意です。
持続する痛み
背中の痛みや腹部の不快感が続く場合は検査を。
血糖値の急変
糖尿病の新規発症や急激な悪化は膵臓がんのサインの可能性があります。
リスク要因を理解する
がんの発生には、喫煙、飲酒、肥満、遺伝などさまざまな要因が関係しています。特に膵臓がんのリスク要因として知られているのは以下の点です。
- 喫煙習慣(国内大規模研究で約2倍のリスク)
- 糖尿病の既往(多目的コホート研究で約2倍のリスク)
- 慢性膵炎
- 肥満
- 膵嚢胞の存在
- 家族歴
これらのリスク要因を複数持つ方は、高リスク群として専門医に相談し、必要に応じてMRCPなどの精密検査を検討することが推奨されています。
がん診療の専門的視点
生存率は「集団としての傾向」を示す指標であり、個人の予後を直接示すものではありません。がん診療連携拠点病院の指針でも、診断時期や治療内容、患者の全身状態によって経過は大きく異なることが示されています。
数字だけで過度に不安になるのではなく、検診や早期受診、そして診断後は専門医と相談しながら最適な治療を選ぶことが重要です。
覚えておきたい5つのポイント
- がんの5年生存率は部位によって11.8パーセントから92.1パーセントまで大きく異なる
- 早期発見できれば多くのがんで良好な予後が期待できる
- 膵臓がんや肝臓がんは早期発見が難しいため、リスク要因がある人は積極的な検査が必要
- 医療技術は日々進歩しており、新しい治療法も次々と登場している。小児がんでは特に生存率の向上が顕著
- 対策型がん検診を推奨年齢・頻度で受診し、体の変化への注意が最も効果的な対策
今日から始められること
がんと診断されることは誰にとっても大きな衝撃です。しかし、データが示すように、早期発見と適切な治療によって、長く生きられる人が増えているのも事実です。
まずはお住まいの市区町村が実施するがん検診を確認し、推奨年齢・頻度に沿って受診すること。そして、体の小さな変化を見逃さないこと。これだけでも、あなたとあなたの大切な人の命を守る大きな一歩になります。
「当たり前の日常」が実は何より尊いものだと、多くのがん経験者が語っています。その日常を守るために、今日から行動を始めましょう。
次のステップ:お住まいの自治体のがん検診情報を確認し、受診予約をしましょう。国立がん研究センター「がん情報サービス」でも詳しい情報が得られます。
主要な出典・参考資料:
- • 厚生労働省「2016年 全国がん登録 生存率報告」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68515.html - • 国立がん研究センター「がん情報サービス」
https://ganjoho.jp/ - • 日本消化器病学会「膵癌診療ガイドライン」
- • 国立がん研究センター「院内がん登録生存率データ」
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代替となるものではありません。ご自身の健康に関する判断は、必ず医療機関で専門医にご相談ください。
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