詐欺師を翻弄する「AIおばあちゃん」デイジーの正体とは?英国で話題の新技術を徹底解説
「もう1時間近く話してるんだけど、いい加減にして!」詐欺師が思わず叫んだその相手は、実は人間ではなくAIでした。イギリスの通信大手が開発した「デイジー」という名のAIおばあちゃんが、今、詐欺電話との戦いで注目を集めています。編み物の話や飼い猫の話で詐欺師の時間を奪い、実際の被害者を守るこの画期的なシステムの全貌を、今回はわかりやすくお伝えします。
日本でも増加傾向!国際電話詐欺にご注意を
現在、日本でもイギリス(+44)やアメリカ(+1)などの国際電話番号を使った詐欺が増加傾向にあることが報告されています。トビラシステムズの2024年調査では、国際電話を悪用した詐欺の着信件数が前年比で増加しており、特に高齢者を狙った手口が確認されています。見知らぬ国際電話には応答しないことが推奨されています。
「AIおばあちゃん」デイジーとは何者なのか
デイジーは、イギリスの通信大手Virgin Media O2が2024年11月14日に発表した詐欺電話対策用のAIシステムです。78歳という設定で、優しいおばあちゃんの声と話し方を完璧に再現しています。
興味深いことに、「Daisy」という名前は単なる人名ではありません。O2が公式に説明している名称由来ではありませんが、「Digital Anti-Fraud Intelligence System(デジタル詐欺対策インテリジェンスシステム)」の頭文字から取られていると解釈されることもあり、技術的な側面とおばあちゃんという親しみやすいキャラクターの両面を持ち合わせています。
このAIの最大の特徴は、詐欺師からの電話に自動で応答し、できる限り長く会話を引き延ばすことで、詐欺師が実際の高齢者に電話をかける時間を奪うという点にあります。O2の発表によると、実際に40分以上も詐欺師を電話に引き留めることに成功したケースがあり、その効果が実証されています。
詐欺師を引き留めた記録
いつでも詐欺電話に対応
AIだから可能な並列処理
デイジーはどのように詐欺師を翻弄するのか
巧妙な会話戦術で時間を浪費させる
デイジーの会話戦術は実に巧妙です。詐欺師が偽のアプリをダウンロードさせようと「Google Play」に誘導すると、デイジーは「いま、ペイストリーって言った?」ととぼけます。さらに「三角形のアイコンは見えるけど、パイの切れ端かもしれないわ」と話を脱線させ、「あなたの地域にはおいしいペイストリーがあるかしら。私はおいしいスコーンが大好きなの」と続けます。
別の実例では、詐欺師が銀行の暗証番号を聞き出そうとした際に、デイジーは編み物の編み目の数を延々と説明し始めたケースもあります。「私の孫のために編んでいるセーターはね、縦が42目で横が38目なの。それとも40だったかしら」といった具合に、全く関係のない話で詐欺師を混乱させます。
このようなわざとした勘違いや話題の脱線によって、詐欺師はペースを完全に乱されてしまうのです。イライラした詐欺師が「人をうっとうしがらせる天才ですね」と嫌みを言っても、デイジーは「ちょっとおしゃべりなだけよ」と軽く受け流します。
リアルタイムAI技術の仕組み
デイジーは3つのステップで動作しています。まず、詐欺師の音声をリアルタイムでテキストに変換します。次に、カスタマイズされた大規模言語モデルが適切な応答を生成し、最後にその返答をおばあちゃんの声に変換して詐欺師に返します。
開発には、YouTubeで詐欺対策に関する動画を配信するジム・ブラウニング氏が協力しており、実際の詐欺電話の会話パターンや詐欺師の行動特性を分析することで、より効果的な対応が可能となりました。
イギリスと日本の詐欺電話の現状
深刻化する英国の詐欺被害
Virgin Media O2が実施した調査によると、イギリスでは5人に1人が毎週詐欺電話や詐欺行為に接触していると報告されています。また、同調査では国民の67パーセント以上が詐欺の標的になることへの不安や詐欺師に対する怒りを訴えていることが明らかになりました。
このような深刻な状況を受けて、O2は詐欺師の電話番号リストにデイジーの番号を複数登録し、詐欺師を積極的に「釣り上げる」戦略をとっています。
日本でも急増する国際電話詐欺
日本でも2024年は国際電話番号を使った詐欺が増加傾向にあることが、トビラシステムズの調査で報告されています。特に、2024年4月から施行された携帯電話不正利用防止法の改正により、IP電話番号の本人確認が義務化されたことを受け、詐欺グループが国際電話番号へとシフトした可能性が指摘されています。
同調査によると、イギリス(+44)やアメリカ(+1)などの番号からの着信が目立っており、警察や通信事業者を名乗る手口が多発していることが確認されています。
| 項目 | イギリス | 日本 |
|---|---|---|
| 被害状況 | 週に5人に1人が詐欺に接触 | 2024年に国際電話詐欺が増加 |
| 主な手口 | 銀行・警察なりすまし | 官公庁・通信会社なりすまし |
| ターゲット | 高齢者が中心 | 高齢者+若年層にも拡大 |
| 対策 | AIデイジー導入 | 国際電話利用休止サービス |
デイジーのメリットとデメリット
メリット
- 詐欺師の時間とリソースを奪い、実際の被害者への電話を減らせる
- 24時間365日稼働可能で、複数の詐欺師に同時対応できる
- 詐欺の手口を記録・分析し、最新のパターンを把握できる
- 実際の会話を公開することで、国民の詐欺への意識を高められる
- 人間のスタッフを危険にさらすことなく詐欺対策ができる
課題・限界
- 詐欺師側もAIを活用する可能性があり、イタチごっこになる懸念
- すべての詐欺電話を捕捉できるわけではない
- 技術に詳しい詐欺師には見破られる可能性がある
- 根本的な詐欺の撲滅には至らず、あくまで時間稼ぎの対策
- 導入・運用にはコストがかかる
あなたができる詐欺電話への対策
基本的な防御策を徹底しよう
デイジーのような高度なシステムがなくても、私たち自身でできる対策があります。最も重要なのは、見知らぬ番号、特に国際電話(+から始まる番号)には絶対に出ないことです。
また、電話で個人情報や暗証番号、ワンタイムパスワードを求められた場合は、相手が誰であっても一度電話を切り、公式の番号に自分からかけ直すことが鉄則です。
今すぐできる5つの対策
- 国際電話利用休止を申し込む – 海外と通話する予定がない方は、携帯会社に国際電話の利用休止を申し込みましょう。無料で手続きできます
- 留守番電話を活用する – 知らない番号からの着信は留守番電話に任せ、本当に必要な電話なら相手がメッセージを残すはずです
- 家族で情報共有する – 詐欺の手口について定期的に家族で話し合い、特に高齢の家族には注意を呼びかけましょう
- 決断を急がされたら疑う – 「今すぐ」「急いで」などと決断を急がせる電話は詐欺の可能性が高いです
- 不審な電話は通報する – 詐欺の疑いがある電話を受けたら、警察相談専用電話(#9110)に通報しましょう
デイジーが示す未来の詐欺対策
AIと人間の協働による防犯
デイジーの成功は、AI技術が詐欺対策において重要な役割を果たせる可能性を示しています。しかし同時に、詐欺師側もAI技術を悪用する可能性があり、技術の進歩は詐欺と対策のイタチごっこを加速させる懸念も指摘されています。
実際、企業の上役の声をAIで模倣して資金を振り込ませる詐欺の事例も報告されています。技術的な対策だけでなく、私たち一人ひとりの警戒心を高めることが不可欠です。
日本版デイジーの可能性
イギリスでデイジーの効果が実証されれば、日本でも同様のシステムが導入される可能性があります。日本語特有の敬語表現や方言を活用すれば、より自然で効果的な対話が実現できる可能性が考えられます。
ただし、技術導入と並行して、国際電話の規制強化や詐欺グループの摘発など、多角的なアプローチが必要と考えられます。O2が英国政府に要望しているような、詐欺を専門に扱う国家機関の設立についても、日本でも検討の価値があるかもしれません。
まとめ:技術と意識の両輪で詐欺から身を守る
イギリスの「AIおばあちゃん」デイジーは、詐欺師の時間を奪うことで実際の被害者を守るという、ユニークなアプローチを実現しました。O2の発表によると、40分以上も詐欺師を電話に引き留めたケースがあり、AI技術の新たな活用可能性を示す事例として注目されています。
しかし、技術だけに頼るのではなく、私たち自身の警戒心も重要です。見知らぬ国際電話には応答しない、決断を急がされたら疑う、家族で情報共有するといった基本的な対策を徹底しましょう。技術と意識の両輪で、詐欺被害を減らしていくことが大切です。
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