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ストーカー加害者にGPS?日本の検討状況と韓国の実例

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ストーカー加害者にGPS?日本の検討状況と韓国の実例
ストーカー対策・GPS検討

ストーカー加害者にGPS?日本の検討状況と韓国の実例

「ストーカー加害者にGPS装着を義務づける」という報道を見て、制度がもう決まったかのように感じた方もいるかもしれません。ですが2026年7月23日時点で、実際にはまだ次の段階です。

  • 政府は、GPS機器の活用を含めたストーカー対策の強化について研究・検討を進めている段階です
  • 制度の導入や法改正の要否は未定で、開始時期も公表されていません
  • 韓国やフランス、ロンドン(イングランド)にはすでに同種の仕組みを運用している例があります

この記事では、日本の検討状況を正確に整理したうえで、海外の実例やそこから見えてきた課題を、一般の読者にもわかりやすくまとめます。GPSは事件を完全に防ぐ装置ではなく、接近を早く見つけ、避難や介入につなげるための一つの手段として位置づけられている点にも触れていきます。

目次

なぜ今、この議論が注目されているのか

2026年3月26日、東京都豊島区内の商業施設で、ストーカー規制法に基づく禁止命令等を受けていた元交際相手により、女性が殺害される事件が起きたと報じられています。加害者は逮捕や罰則をすでに受けていたにもかかわらず、事件が防げなかったことから、現行制度の限界を指摘する声が広がりました。

こうした状況を受け、木原稔官房長官は2026年7月23日の記者会見で「ストーカーの加害者にGPS機器を装着すること等を含め、ストーカー対策の強化の方策について強力に研究を進めている」と述べました。あわせて、関係省庁が諸外国の制度や技術・運用上の課題を調査しており、法整備の必要性も含めて今後検討していく、という認識を示しています。つまりこの時点では、制度化を決定したのではなく、研究・検討の途中にあるという段階です。

自民党は2026年5月に、GPS装着や加害者への治療的関わりなどを含む提言を政府に提出しています。これは政党からの提言であり、政府としての決定ではない点に注意が必要です。

数字で見る日本の現状

警察庁によると、2025年の相談等件数は22,881件で、統計上2番目の高水準でした。一方、禁止命令等は3,037件、ストーカー規制法違反の検挙は1,546件となり、いずれも法施行後最多を記録しています。

22,881件 2025年のストーカーに関する相談等件数(2017年の23,079件に次ぐ高水準) 出典:警察庁
3,037件 2025年の禁止命令等の発出件数(法施行後最多、初の3,000件超え) 出典:警察庁
1,546件 2025年のストーカー規制法違反の検挙件数(法施行後最多) 出典:警察庁

22,881件は単純平均すると、全国で1日約63件の相談等が寄せられた計算になります。また、ストーカー規制法違反による検挙1,546件の内訳は、つきまとい行為等によるストーカー行為罪が1,302件、禁止命令等に違反した摘発が244件です。なお、行政措置や検挙、警察本部長等の援助については2024年から集計方法が一部変更されており、それより前の数値と単純に比較すると実態を見誤る可能性がある点にも注意してください。件数が増えている背景には、相談体制が整い被害が表面化しやすくなったことも一因として考えられますが、断定はできません。

実際、神奈川県では2025年、県警がストーカー事案をめぐって摘発した件数が前年の3倍を超えたと報じられています。これは以前の対応が不十分だったと指摘された事案を受け、警察が対応を積極化させた結果とみられており、地域や時期によって対応の実態に差が出やすいことを示す例といえます。

「禁止命令等」の後は把握できていない

現在の制度は、加害者につきまといなどをやめるよう命じる「禁止命令等」までは可能です。しかし、命令を出した後に加害者がどこで何をしているかを常時把握する手段はありません。この「命令の後」の空白をどう埋めるかが、GPS活用が議論される最大の理由になっています。

日本の現在のストーカー対策

ストーカー規制法では、加害者への対応として主に次の段階があります。

警告・禁止命令等・罰則

警察は事案の危険性や切迫性に応じて、「警告」「禁止命令等」「検挙」といった措置を行います。これらは必ずしも警告から順番に進むわけではなく、重大な危険がある場合には早期に検挙による対応が取られることもあります。2025年12月10日に公布、同月30日に施行された改正法により、被害者からの申告がなくても警察の職権で警告を出せるようになりました。禁止命令等に違反した場合は罰則の対象になります。

カウンセリング・治療につなげる取り組み

警察庁は2024年3月から、禁止命令等を受けた加害者を治療機関につなげる働きかけを強化しています。ただし受診はあくまで加害者本人の任意です。報道によれば、2025年にカウンセリングや治療の実施につながった加害者は233人で、前年より49人増えたとされています。受診等には本人の同意が必要となるため、応じない加害者にどう対応するかが課題として残っています。

加害者がGPSを悪用する行為への規制

混同されやすいですが、現在すでに規制されているのは「加害者が紛失防止タグなどを使って被害者を追跡する行為」です。一方、今回議論されているのは「行政が加害者にGPS装着を義務づける」という、まったく逆方向の制度です。この2つは区別して理解する必要があります。

よくある疑問Q&A

Q1. GPS装着義務化は、もう決まったのですか?

いいえ。2026年7月23日時点では、政府がGPS機器の活用を含めたストーカー対策の強化を研究・検討している段階です。制度化の是非や法改正の必要性そのものが、これから検討される内容に含まれています。

Q2. いつから始まりますか?

確定した開始時期はありません。2026年7月23日のテレビ朝日系(ANN)の報道では、政府が近く犯罪対策閣僚会議で緊急対策をまとめたうえでストーカー規制法を改正し、2027年の通常国会への法案提出を目指す方針だとされています。ただし、これは政府関係者への取材に基づく報道であり、正式決定ではありません。対象者や装着期間などの詳細も公表されていないため、続報を確認することをおすすめします。

Q3. 誰が対象になりますか?

対象範囲もまだ決まっていません。報道では、禁止命令等を受けた加害者のうち特に悪質なケースが想定されているとされていますが、装着を決定する主体や手続き、装着期間などの制度設計はこれからの検討事項です。

Q4. GPSをつければ、事件は防げますか?

GPSは万能な防止策ではありません。海外の運用でも、機器の破損や電池切れ、通信環境による誤差などの技術的な限界が指摘されています。一方で、接近を早期に察知して警察対応や避難につなげたり、違反の証拠として活用できたりする点は、期待される効果として報告されています。「事件を完全に防ぐ装置」ではなく「接近を早く見つけ、介入を早める補助的な手段」と捉えるのが実態に近いといえます。

Q5. 今、被害を受けている場合はどうすればいいですか?

制度の検討状況にかかわらず、今使える相談窓口や法制度はあります。記事後半の相談先とチェックリストを参考に、一人で抱え込まず早めに相談することをおすすめします。

海外の制度と、数字の読み方

GPSで加害者の位置を管理する仕組みは、日本だけが検討している珍しい制度ではありません。ただし、国によって対象や仕組みが異なるため、確認できる範囲に絞って正確に比べることが大切です。

国・地域対象・段階主な仕組み効果検証上の注意
韓国性犯罪者(2008年〜)、裁判所の暫定措置を受けたストーカー行為者等(2024年1月〜)位置追跡電子装置(電子足輪)で24時間監視。加害者が接近禁止区域に入ると監視センターや被害者に通知再犯率の低下は主に性犯罪全体の統計。韓国警察庁によると、警察が装着を申請しても、実際に裁判所が認めるのは4割弱にとどまっている
フランスDV加害者(刑事・民事の手続きを通じて)「接近防止ブレスレット」により加害者と被害者双方の位置を測定し、一定距離まで近づくと警報2020年から運用開始。導入当初は装着件数が想定より伸び悩んだ時期もあったと報告
ロンドン(イングランド)釈放後の高リスクDV加害者(2021年〜)。開始当初からDVに伴うストーカーやハラスメントも対象に含まれ、2024年12月からはDVを伴わないストーカー行為者向けの別の試行運用も開始GPSタグで行動を監視し、仮釈放条件の遵守状況を確認ロンドン市の分析では装着後に訴追対象となる割合が装着前より低かったとされるが、地域限定の試行段階で全国的な評価は途上

韓国の「再犯率9分の1」の正しい読み方

韓国法務部のページ(전자감독제도)では、電子監督制度の施行前後を比較して、性犯罪者の同種再犯率が約9分の1の水準まで減少したと説明されています。具体的な数値については、施行前(2003〜2007年平均)が14.1%、施行後(2008〜2023年平均)が1.6%とされています。

ただし、これは制度施行前後の実績を比較した数値であり、GPSによる電子監督だけが再犯率低下の原因だと証明するものではありません。保護観察官による指導や治療プログラムなど、他の取り組みも組み合わされた結果である点、また対象は性犯罪者全体であり、ストーカー行為者に限定した数値ではない点にも注意が必要です。

さらに、ストーカー行為者への装着が始まった2024年以降の運用では、警察が装着を申請しても裁判所が認めるのは2025年で37.1%(申請858件のうち認容318件)にとどまっており、制度があっても実際の装着まで至らないケースが多いことも課題として指摘されています。

また韓国法務部は、2025年12月に成立した改正法にもとづき、2026年6月24日から「加害者位置情報・被害者通知」制度の本格運用を開始しました。電子装置を装着したストーカー加害者などが一定距離まで接近すると、被害者がスマートフォンの専用アプリの地図上で加害者の位置と移動経路を確認できる仕組みで、被害者保護の強化策として位置づけられています。

導入する場合のメリットと課題

この話題は「被害者の安全」対「加害者の人権」という単純な対立で語られがちですが、実際には比例性や司法審査、データ管理、運用体制まで含めた制度設計の問題です。

期待されるメリット

  • 加害者の接近を早い段階で察知できる可能性がある
  • 常時監視されているという意識が、加害者側への抑止力になり得る
  • 警察のパトロールだけに頼らない被害者保護の手段が増える
  • 違反があった場合、位置情報が客観的な証拠として活用できる

指摘されている課題

  • 建物内や地下など、位置情報の精度が落ちる場所がある
  • 通信障害や充電切れ、機器の破損への対応
  • 誤って通知された場合の対応や、通知から警察到着までの時間
  • 24時間監視を支える人員や費用の確保

法制度・被害者保護の面での論点

誰が装着を決定するのか、有罪判決の前でも装着できるのか、装着期間をどう定め見直すのか、不服申立ての仕組みをどうするか、位置情報の保存期間や閲覧権限、制度が終わった後のデータ削除といった論点も整理が必要です。あわせて、被害者が通知を受け取るかどうかを選べるようにするか、通知そのものが被害者の不安を強めてしまわないか、転居や避難、警護との連携をどう組み合わせるかも、被害者保護の観点から重要な検討事項です。

制度設計で議論すべき3つの論点

1. 被害者の安全をどこまで高められるか

常時監視によって接近を早く察知できる可能性がある一方、GPSだけで危険を完全に取り除けるわけではないという指摘があります。避難や警護など、他の保護手段と組み合わせる設計が求められます。

2. 人権・適正手続とどう両立させるか

加害者側にも手続き上の権利があり、装着の要否を誰がどのような基準で判断するのかという比例性の議論が欠かせません。海外の制度でも、司法の関与や不服申立ての仕組みが重要な論点とされています。

3. GPS監視と治療的支援をどう組み合わせるか

専門家からは、ストーカー加害者の中には自身の行為の問題性を十分に認識できていない人もいるとの指摘があります。2025年にカウンセリングや治療の実施につながった加害者は233人で、前年より49人増えたとされていますが、受診等には本人の同意が必要であり、監視の仕組みだけでなく、加害者本人への教育的・治療的な関わりを組み合わせる必要性も議論されています。

今すぐ確認したいチェックリスト

ストーカー被害は「まだ大丈夫」と我慢してしまい、相談のタイミングを逃しやすいと言われています。次の項目に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

  • 相手から繰り返し連絡が来て、断ってもやめてもらえずに困っていませんか?
  • 自宅や職場、通勤・通学路の近くで相手の姿を何度も見かけていませんか?
  • 誰かに見られている、後をつけられているという不安を感じていませんか?
  • すでに警察へ相談したものの、状況が改善していないと感じていませんか?
  • 不安から外出や日常生活そのものが制限されてしまっていませんか?

一つでも当てはまる場合は、一人で抱え込まず、早めに警察や相談窓口に状況を伝えることをおすすめします。メッセージや着信履歴、日時・場所などの記録は、安全な範囲で残しておくと役立つとされています。ただし、証拠を集めるために自分から相手に接触したり、危険な場所へ戻ったりしないよう注意してください。

相談先の役割を知っておく

110番:相手が近くにいる、待ち伏せ、侵入、暴力や凶器の危険があるなど、緊急時に連絡してください。

警察相談専用電話「#9110」:緊急ではないが警察に相談したい場合の窓口です。

「#8008」(DV相談ナビ):配偶者や交際相手など親密な関係からの暴力に関する相談窓口で、最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながります。ストーカー被害全般を対象とした専用番号ではない点に注意してください。

まとめ

ストーカー加害者へのGPS装着は、2026年7月時点ではまだ研究・検討段階の話です。導入の可否、対象範囲、開始時期のいずれも決まっておらず、韓国やフランス、ロンドン(イングランド)の実例は参考にはなっても、そのまま日本に当てはまるとは限りません。GPSは事件を防ぐ万能の装置ではなく、接近を早く見つけて介入につなげる一つの手段として、他の対策と組み合わせて検討されていくことになりそうです。

もし今、身近な人からのつきまといや執拗な連絡に悩んでいるなら、制度の行方を待つ必要はありません。警察相談専用電話や自治体の相談窓口など、今すぐ頼れる場所は用意されています。

最後までお読みいただきありがとうございます。↓↓のバナーをクリックして応援いただけると嬉しいです。

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