米最高裁、トランプ関税を「違法」と判断
新たな10%関税が2月24日から発動
関税とは:外国から輸入される商品にかける税金のこと。関税が上がると輸入業者のコストが増え、スマートフォン・パソコン・海外ブランド品・輸入食品などの販売価格に転嫁されることがあります。
2026年2月20日、アメリカの最高裁判所がトランプ大統領の関税政策に「違法」という歴史的な判断を下しました。ところがトランプ大統領は直ちに別の法律を根拠に、世界中に10%の新たな関税をかけることを宣言。これはアメリカに輸出している日本企業にも影響を与え、為替や株価を通じて投資信託・年金にも波及しうる出来事です。何が起きているのか、生活への影響を中心にわかりやすく解説します。
公開日:2026年2月21日
各報道機関による
出典:CBP統計
2025年12月14日時点
出典:ホワイトハウス
ファクトシート(2026.2.20)
そもそも「関税」って何?
関税とは、外国から輸入される商品にかける税金のことです。たとえばアメリカが日本製品に10%の関税をかけると、その商品を輸入する企業はその分だけコストが上がります。結果として商品の値段が上がり、最終的に負担するのは消費者です。スーパーで売られているアメリカ産の果物や、日本からアメリカへ輸出される車なども、関税の影響を直接受けます。
「相互関税」とは?
トランプ大統領が2025年に打ち出した「相互関税」とは、各国が米国製品にかけている関税と同じ水準の税率を、その国からの輸入品にも課すという政策です。日本には15%、一部の国にはさらに高い税率が設定されました。
今回の最高裁判決で何が変わった?
各報道機関によると、米連邦最高裁は2026年2月20日、9人の判事のうち6人が「違法」との判断を示したと伝えられています。保守・リベラルの両陣営から判事が加わる、ねじれた顔ぶれの多数意見で、トランプ氏が自ら指名した判事も多数意見に加わったことが大きな話題を呼びました。
何が「違法」とされたの?
トランプ大統領は「IEEPA(国際緊急経済権限法)」という、1977年制定の「緊急時の経済制裁用の法律」を根拠に、議会を通さずに一方的に関税を課していました。各社報道によると最高裁は「この法律は大統領に関税を課す権限を与えていない」と判断したとされています。アメリカ憲法では、関税を課す権限は本来「議会」にあると定められているためです。
これまでの経緯を時系列で確認
複雑に見えますが、流れを整理するとシンプルです。
| 時期 | 出来事 | 状況 |
|---|---|---|
| 2025年4月 | IEEPA を根拠に「相互関税」発動。約70か国・地域が対象 | 当時:有効 |
| 2025年5月 | 米国際貿易裁判所(1審)が差し止め命令 | 審理中 |
| 2025年8月 | 連邦高裁(2審)も違法と判断 | 審理中 |
| 2026年2月20日 | 米連邦最高裁が6対3で「違法・無効」と確定 | 最高裁が違法と判断(報道) |
| 2026年2月24日 | ホワイトハウス発表によると、通商法122条による10%関税を発動 | 発動(ホワイトハウス発表) |
新たな「10%一律関税の中身と期間(通商法122条)」とは?
ホワイトハウスの公式ファクトシート(2026年2月20日付)によると、かつてほとんど使われてこなかった「1974年通商法第122条(国際収支の悪化を理由に期間限定の上乗せ関税を認める条文)」を根拠に、大統領布告「Imposing a Temporary Import Surcharge to Address Fundamental International Payments Problems」が署名されたと報じられています。2月24日午前0時1分(日本時間同日午後2時1分)から全世界に一律10%の関税が適用されるとしています。
この関税が実際の生活に及ぼす影響として、アメリカから輸入される家電・IT機器・海外ブランド品などはコストが上がる分、価格に転嫁される可能性があります。一方でアメリカ産の牛肉・オレンジなどの農産物や医薬品は対象外のため、スーパーでの直接値上がりはすぐには起きにくいでしょう。アメリカへの旅行費用については、為替と組み合わさって変動する可能性があります。
ポイント整理:新・10%関税の主な内容(ホワイトハウス ファクトシート 2026年2月20日付ベース)
- 発動日:2026年2月24日 東部標準時午前0時1分(日本時間:午後2時1分)
- 税率:全輸入品に一律10%上乗せ(法律上の上限は15%)
- 有効期限:最長150日間(2026年7月23日まで)。議会承認があれば延長可能
- 対象外の例(ファクトシート Annex I・II):一部農産物・医薬品・重要鉱物・エネルギー製品など
- USMCA(米・メキシコ・カナダ協定)適合品の一部には免除あり
- 鉄鋼・アルミ・自動車への関税(通商拡大法232条)は別根拠のため継続。中国向け追加関税(通商法301条)も継続
今回の判決で「プラスに働きそうなポイント」と「注意が必要なポイント」
プラスに働きそうなポイント
- 高関税の撤廃で輸入業者のコスト負担が一部減少
- 農産物・医薬品は対象外のため、日常的な食品・薬の値上がりはすぐには起きにくい
- 米国の小売業者は仕入れコスト低下を歓迎
- 日本の輸出企業は従来より高い関税水準から解放される形に
- 司法が大統領権限を抑制するという民主主義の枠組みが機能した
注意が必要なポイント
- 10%新関税は引き続き輸入品のコストを押し上げ、家電・ブランド品などに波及する可能性
- 自動車・鉄鋼・アルミへの高関税(232条)は今も継続中
- 約20兆円分の関税返還訴訟は長期化の見通しで、不透明感が続く
- 7月24日以降の政策が見通せず、企業が設備投資・採用計画を立てにくい
- 関税政策が変わるたびに為替・株価が動き、投資信託・年金の評価額に影響
世界はこの判決をどう受け止めた?
「アメリカの内輪の話」ではなく、世界各国が深く注目していたことがわかります。
国営メディアが「トランプ政権にとって重大な挫折」と速報。大統領権限への制限を強調する論調の報道が目立った。
貿易担当相が「アメリカの関税が不当であるというカナダの立場を裏付けるもの」といった趣旨の歓迎コメントを発表したと報じられた。
政府が担当者による緊急対策会議を開催し、「企業の利益を守るために最善を尽くす」といった方針を示したと各社が伝えた。
日本向けダイジェスト:知っておきたいこと
日本の輸出企業(トヨタ・ホンダといった自動車メーカー、ソニーなどの電子機器メーカーなど)は、段階的に引き下げられていた相互関税が今回の判決で無効となり、新たな一律10%が適用されます。関税水準が変わることで、現地での販売価格や利益率にも影響が出る可能性があります。
ただし、自動車への関税(通商拡大法232条)と対中国の高率関税(通商法301条)は今回の判決の対象外であり、引き続き有効です。また150日後の関税政策が不透明なため、企業は引き続き慎重な姿勢が求められます。株価・為替を通じて、投資信託や年金の評価額にも波及しうる点は意識しておきましょう。
今後の見通し:150日後に何が起きる?3つのシナリオ
各社報道によると、トランプ大統領は「通商法301条(不公正な貿易慣行への制裁条文)」に基づく新たな調査の開始も宣言したとされています。中国やブラジルが名指しされており、調査結果によっては追加の制裁関税が課される仕組みです。7月24日の期限以降、考えられる展開は大きく3つです。
7月24日以降の3つのシナリオ(いずれも未確定情報です)
シナリオA:個別制裁へ移行
10%関税を終了し、301条調査の結果を根拠に国・品目ごとの制裁関税へ移行する。対象が絞られる分、影響を受ける分野と受けない分野が明確になる。
シナリオB:議会と妥協して延長
議会の承認を得て関税を延長または形を変えて継続。交渉カードとして使いながら、貿易相手国と個別の取引を重ねるスタイルが続く。
シナリオC:政治的対立で不透明感が長期化
関税政策の法的根拠をめぐる対立が続き、企業が投資・採用の判断を先送りする。為替・株価が不安定な状態が続く可能性。
また、CBP統計(2025年12月14日時点・約1,330億ドル)をもとに、すでに徴収された関税の返還を求める動きが多数起きていると報じられています。トランプ氏は記者会見で「返還については全く議論していない」と発言し、長期の法廷闘争になるとの趣旨の発言をしたと各社が伝えており、この問題の決着も見通しが立たない状況です。
今、私たちにできることは?
生活者向けチェックリスト
- スマートフォン・パソコン・家電など輸入品の価格動向を継続してチェックする
- アメリカ産の牛肉・農産物・医薬品は対象外のため、スーパーでの即時値上がりはすぐには起きにくい
- 自動車・鉄鋼・アルミ製品への関税(232条)は継続中。これらに関わる業種は引き続き注意
- 2026年7月24日が新たな関税の「節目」。その前後のニュースに注目する
- 関税ニュースが出るたびに円ドルの為替が動きやすい。海外旅行や海外通販の費用に注意
- 投資信託・年金は株価・為替に連動するため、急落・急騰の際はあわてて動かず状況を見極める
まとめ
今回の米最高裁判決は、「大統領であっても議会の承認なしに自由に関税を課すことはできない」という、民主主義の根本的なルールを改めて示したものです。トランプ大統領はすかさず別の法律で10%関税を打ち出しましたが、その有効期限は最長150日。関税政策をめぐる動きは今後も続きます。
「関税なんて遠い話」に思えるかもしれませんが、日々の買い物の値段、為替レート、ひいては企業の雇用にも波及します。難しいニュースも「誰が、どんな法律で、何を、いつまで」という4点を意識すると、ぐっとわかりやすくなります。
最後までお読みいただきありがとうございます。↓↓のバナーをクリックして応援いただけると嬉しいです。













