【2026年5月までに施行】離婚後の親権制度改正
「離婚したら子どもの親権はどちらか一方だけ」—— これまで当たり前だったこの常識が、大きく変わろうとしています。
2024年5月に成立した改正民法(令和6年法律第33号)により、2026年5月までに、離婚後も父母の両方が親権を持てる「共同親権」制度がスタートします(具体的な施行日は政令で定められます)。この記事では、新しい制度の内容から実際の選択方法まで、あなたが知っておくべきすべてを解説します。
この記事の情報は2025年10月31日時点のものです。本記事で紹介する制度の詳細(養育費の金額等)は法務省から公表されている改正案・暫定案を基にしており、今後変更される可能性があります。最終的な判断の際は、必ず法務省の公式情報や専門家にご相談ください。
参考資料: 改正民法(令和6年法律第33号)/ 法務省「離婚後の子の養育への父母の関わり方に関する民法等の改正について」
制度の基本情報
2024年5月に成立した改正民法(令和6年法律第33号)により、1898年の明治民法施行以来、初めて離婚後の共同親権が認められることになりました。これは日本の家族法における歴史的な転換点といえます。
📌 法的根拠:
• 改正民法(令和6年法律第33号)
• この改正は、2026年5月までに順次施行される予定です(正確な開始日は政令で定められます)。
• 報道では「2026年4月1日から導入」とする政府案も伝えられていますが、最終的な施行日は今後正式に決定されます。
• 詳細は法務省公式サイトでご確認いただけます
施行時期
この期限までに新制度がスタート
※正確な日付は政令で定められます
法定養育費(暫定案)
取り決めがなくても請求可能※
子ども1人あたり
養育費の先取特権(暫定案)
優先弁済を受けられる上限額※
他の債権より優先
※ 養育費の金額、対象条件(いつ離婚したケースまで含むか等)は最終決定前です。上記は報道・省令案に基づく暫定的な数値であり、施行までに変更される可能性があります。最新情報は必ず公式発表をご確認ください。
まず知っておきたい基礎知識
よくある5つの疑問
- Q1: すでに離婚している場合はどうなる?
この制度は現時点ではまだ施行されていません(2025年11月1日時点)。すでに単独親権の家庭が、自動的に共同親権へ切り替わることはありません。共同親権を希望する場合は、施行後(2026年5月までに開始予定)に家庭裁判所での手続きが必要になる見込みです。ただし、法定養育費の制度は施行日以降の離婚のみが対象となる見込みです(最終確定前)。 - Q2: 共同親権を選ぶと何が変わる?
子どもの進学先の決定、引っ越し、高額な医療行為など、重要な決定事項については父母双方の合意が必要になります。一方で、日常的な学校行事への参加や緊急時の医療判断は、一方の親だけで決められます。 - Q3: 話し合いがまとまらない場合は?
父母間で合意できない場合、家庭裁判所が「子の利益」の観点から判断します。裁判所は子どもの年齢、生活環境、父母の協力関係などを総合的に考慮して決定します。 - Q4: DVや虐待の心配がある場合は?
父または母からの虐待、あるいは父母間のDVの恐れがある場合、家庭裁判所は必ず単独親権を選択することが法律で定められています。子どもの安全が最優先されます。 - Q5: 法定養育費って何?
離婚時に養育費の取り決めをしていなくても、子ども1人あたり月額2万円(暫定案)を請求できる制度です。これは暫定的な最低保障であり、別途協議して増額することも可能です。※金額や対象条件は最終決定前です。
共同親権と単独親権の違い
新制度では、離婚時に父母が協議して「共同親権」か「単独親権」を選択します。それぞれの特徴を理解して、お子さんにとって最善の選択をしましょう。
💡 重要: 共同親権は義務ではありません。父母が共同親権か単独親権かを選べる制度です。父母間で意見が割れたときは、家庭裁判所が子の利益を基準に決定します。
面会交流制度の見直し
共同親権制度と並んで、面会交流に関する手続きも大幅に見直されます。これは子どもが離婚後も両親との良好な関係を維持するための重要な改正です。
面会交流制度の主な変更点
1. 面会交流の取り決めが原則化
離婚時に、面会交流について取り決めることが原則となります。協議離婚の場合も、面会交流の頻度・方法・場所などを具体的に定めることが求められます。
2. 家庭裁判所の関与強化
父母間で合意できない場合、家庭裁判所が以下の観点から面会交流の内容を定めます:
- 子どもの年齢・発達段階
- 子ども自身の意向
- 父母の生活状況・居住地
- 過去のDVや虐待の有無
3. 履行確保の仕組み
取り決めた面会交流が適切に実施されるよう、家庭裁判所の履行勧告・調停などの手続きが整備されます。また、必要に応じて第三者機関による面会交流支援も活用できます。
4. 子どもの意見の尊重
子どもの年齢や成熟度に応じて、面会交流について子ども自身の意見を聴取することが重視されます。特に中学生以上の場合、子どもの意向が大きく考慮されます。
面会交流で決めておくべき具体的内容
- 頻度: 月1回、月2回、長期休暇時など
- 時間: 1回あたり何時間、宿泊の有無
- 場所: 自宅、公園、施設など
- 連絡方法: 事前調整の方法、緊急時の連絡先
- 費用負担: 交通費、食事代などの分担
- 柔軟な対応: 子どもの体調不良時や学校行事との調整方法
| 項目 | 共同親権 | 単独親権 |
|---|---|---|
| 親権者 | 父母の両方 | 父または母のどちらか一方 |
| 重要な決定 | 進学・転居・高額医療など → 両親の合意が必要 | 親権者が単独で決定可能 |
| 日常の決定 | 学校行事参加・日常の医療など → 一方の親が単独で決定可能 | 親権者が決定 |
| 緊急時 | 緊急手術など → 一方の親が単独で決定可能 | 親権者が決定 |
| 適している状況 | 父母間の協力関係が良好 定期的なコミュニケーションが可能 子どもの利益を最優先できる | 父母間の関係が困難 DV・虐待の恐れがある 意思疎通が難しい |
メリットとデメリットを理解する
共同親権のメリット
- 両親との関係継続
子どもが離婚後も両親との絆を保ち続けることができ、精神的な安定につながります。 - 重要な決定に両親が関与
進学や医療など、子どもの人生に大きく影響する決定に両親が参加できます。 - 養育責任の共有
経済的・精神的な養育責任を両親で分担でき、一方への負担集中を防げます。 - 面会交流の促進
共同親権により、定期的な面会がより自然に実現しやすくなります。
共同親権のデメリット
- 意思決定に時間がかかる
重要事項を決める際、父母間の調整が必要となり、迅速な判断が難しくなる場合があります。 - 対立の継続
父母間の関係が良好でない場合、子どもに関する決定のたびに対立が生じる可能性があります。 - 子どもへの負担
両親の板挟みになったり、それぞれの親の意見を聞かされることで、心理的負担を感じる場合があります。 - 連絡調整の負担
日常的に元配偶者とコミュニケーションを取る必要があり、精神的な負担になることがあります。
どちらを選ぶべき? 判断のポイント
共同親権が向いているケース
以下の条件が揃っている場合、共同親権を検討する価値があります:
- 父母間で冷静な話し合いができる
- 子どもの利益を最優先する意識を両親が共有している
- 定期的な連絡・調整が可能である
- 住居が極端に離れていない(定期的な面会が可能)
- DVや虐待の懸念が一切ない
- 子ども自身が両親との関係を望んでいる
単独親権を選ぶべきケース
以下に該当する場合、単独親権が適切です:
- DVや虐待の事実、または恐れがある
- 父母間で激しい対立があり、協力が困難
- アルコール依存症や精神疾患など、養育に支障がある
- 一方の親が養育に無関心または放棄している
- 地理的に大きく離れており、連絡調整が現実的でない
- 子どもの安全や福祉が脅かされる可能性がある
実際の手続きステップ
5つの実践ステップ
- ステップ1: 情報収集
法務省の公式サイトでQ&A資料を確認し、制度の詳細を理解します。不明点は弁護士や家庭裁判所の相談窓口で確認しましょう。 - ステップ2: 自己分析
元配偶者との関係性、子どもの意向、居住地の距離、経済状況などを客観的に評価します。感情ではなく、子どもの利益を軸に考えます。 - ステップ3: 相手との協議
冷静に話し合いの場を設けます。必要に応じて調停委員や弁護士を交えることも検討しましょう。子どもの生活の安定を最優先に議論します。 - ステップ4: 合意形成または申立て
協議で合意できた場合は離婚届に記載します。合意できない場合は、家庭裁判所に親権者指定の調停・審判を申し立てます。 - ステップ5: 運用ルールの確立
共同親権を選択した場合、日常的な連絡方法、面会交流の頻度、重要事項の決定プロセスなど、具体的な運用ルールを文書化しておくことが重要です。
法定養育費についても忘れずに
親権の選択と並行して、養育費についても取り決めを行いましょう。制度施行後(2026年5月までに開始予定)の離婚では、取り決めがない場合でも月額2万円(暫定案)の法定養育費を請求できる見込みですが、これはあくまで最低限の金額です。
子どもの生活水準を維持するため、双方の収入や子どもの年齢に応じた適切な金額を協議することをお勧めします。また、養育費の不払いがあった場合、最大8万円(暫定案)を上限に他の債権より優先して回収できる「先取特権」も設けられる予定です。
※ 養育費の金額、対象条件(いつ離婚したケースまで含むか等)は最終決定前です。上記は報道・省令案に基づく暫定的な情報であり、施行までに変更される可能性があります。
専門家への相談も検討しましょう
親権の選択は子どもの将来に大きく影響する重要な決定です。以下のような専門家への相談を積極的に活用しましょう:
- 弁護士: 法律的な権利関係の整理、協議書の作成、調停・審判の代理
- 家庭裁判所の調停: 中立的な立場から父母間の調整をサポート
- 臨床心理士: 子どもへの影響、心理的なケアのアドバイス
- ファイナンシャルプランナー: 養育費の適切な金額設定、経済的な見通し
各自治体の家庭相談窓口や法テラスなども無料相談を実施していますので、まずは気軽に相談してみることをお勧めします。
📞 主な相談窓口・リンク集
DV・虐待など緊急の安全確保が必要な場合は、110番(警察)または自治体の配偶者暴力相談支援センターへ速やかにご連絡ください。
DV相談ナビ: #8008(最寄りの相談窓口につながります)
- 法務省:
https://www.moj.go.jp/
改正民法の詳細、Q&A資料など - 裁判所 – 家庭裁判所:
https://www.courts.go.jp/
調停・審判の手続き案内 - 法テラス(日本司法支援センター):
https://www.houterasu.or.jp/
無料法律相談(収入要件あり) - こども家庭庁:
https://www.cfa.go.jp/
子育て支援、養育費相談など
まとめ
2026年5月までに施行される共同親権制度(改正民法・令和6年法律第33号)は、離婚後の親子関係に新たな選択肢をもたらします。
大切なのは、「どちらが正しい」ではなく、「お子さんにとって何がベストか」という視点です。父母間の関係性、子どもの意向、生活環境を総合的に考慮し、慎重に判断してください。
この制度は、子どもが健やかに成長するための環境を整えることを目的としています。感情的にならず、冷静に、そして子どもの笑顔を第一に考えて、最善の選択をしていきましょう。
※この記事の情報は2025年10月31日時点のものです。本記事で紹介した養育費の金額・対象条件等は改正案・省令案に基づく暫定的な情報であり、今後変更される可能性があります。最新情報は法務省ホームページでご確認ください。
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