春節なのに閑散
中国依存ホテルに何が起きているのか
― 訪日中国人客60.7%減の衝撃と、日本人旅行者が受ける意外な恩恵
「ロビーは歩く場所がないほどだったのに、今は同じホテルなのかと思うくらい違う」――山梨・富士河口湖町のホテル運営責任者はそう語ります。例年なら中国人観光客でにぎわう春節(旧正月)の大型連休。しかし今年は、日中関係の悪化が直撃し、各地のホテルで深刻な影響が出ています。
JNTO(日本政府観光局)の推計によると、2026年1月の訪日中国人客は前年比60.7%減。原因は大きく2つです。1つは2025年11月の国会答弁を機に中国政府が発出した「日本への渡航自粛公告」。もう1つは、前年(2025年)の春節が1月だったのに対し今年は2月となった時期のずれによる反動減です。この2つが重なり、特に中国客に依存していた施設が直撃を受けています。
「自分には関係ない話」ではありません ― あなたへの直接的な影響
ホテルの経営危機は業界の内輪話ではなく、今すぐ旅行者として活用できる変化が起きています。
大阪・春節時期に昨年の約5割まで宿泊料金を引き下げたホテルも出ています。中国客を当て込んでいた施設ほど値下げ幅が大きく、今が狙い目の時期です。
富士河口湖・大阪ミナミなど、例年の春節に混雑が激しかった観光地も今年は落ち着いた状態です。写真が撮りやすい・ゆっくり見て回れる環境が生まれています。
一方で、観光産業への打撃が長引けば、地元の雇用・税収・サービス水準にも影響が及びます。個人としての恩恵と、地域経済へのリスクは表裏一体です。
今、何が起きているのか ― 数字で見る現状
JNTO(日本政府観光局)が2026年2月18日に発表した1月の訪日外国人客数のデータは、中国依存の危うさを数字で示しています。
前年同月比(JNTO発表)
4年ぶりの前年割れ
GRP=域内総生産(地域の稼ぎ)
(日本総合研究所・試算)
山梨・富士河口湖町の富士山リゾートホテルは客の約9割が中国人でした。12〜2月の3ヶ月で売り上げが数千万円単位のマイナスとなり、「壊滅的」という言葉が飛び出す事態に。大阪市内の大手ホテルでは昨年春節に中国個人客で埋まっていた約1,000室が、今年はわずか150室(85%減)の予約しか入っていません。
※掲載数値はJNTO推計値(2026年2月18日発表)。確定値ではないため、今後修正される場合があります。
基本の疑問を整理する
「なぜ急に減ったの?」「日本全体への影響は?」よく出る疑問に答えます。
- そもそも、なぜ中国人観光客が急減したの? 2025年11月7日、国会で台湾有事への集団的自衛権行使について言及する答弁がありました。中国政府がこれに反発し、11月14日に日本への渡航自粛を呼びかける公告を発出しました。中国の大手航空3社も日本便のキャンセルを手数料なしで受け付け、一部は大幅に減便しています。
- 「春節」って何?なぜ重要なの? 春節は中国・台湾・東南アジアなどの旧正月で、数日〜1週間以上の大型連休が生まれます。この時期は例年、日本へのインバウンド需要が急増し、ホテルや観光地の書き入れ時とされています。
- 他の国の観光客は来ていないの? 来ています。韓国(前年比21.6%増)、台湾(17.0%増)、米国(13.8%増)など多くの国・地域から増加中。ただし中国1か国の減少幅が大きく、全体を引き下げた形です。
- 日本人には何か関係ある? 直接的な恩恵として、一部ホテルで宿泊料金が下がっています(大阪のあるホテルは春節比で約5割に値下げ)。また観光地の混雑が緩和される側面もあります。
- いつまでこの状況が続くの? 現時点(2026年2月)では見通しは不透明です。JTBは2026年の訪日客数が2025年見込みから微減すると予測しており、専門家も長期化を懸念しています。
国別の訪日客数 ― 中国だけが逆行している
2026年1月のデータ(JNTO推計)で主要市場を比較すると、中国の突出した落ち込みが際立ちます。
| 国・地域 | 2026年1月 訪日客数 | 前年同月比 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 38万5,300人 | -60.7% | 大幅減少 |
| 香港 | 20万人 | -17.9% | 減少 |
| 韓国 | 117万6,000人 | +21.6% | 単月最多更新 |
| 台湾 | 69万4,500人 | +17.0% | 単月最多更新 |
| 米国 | 20万7,800人 | +13.8% | 好調継続 |
| 豪州 | 16万700人 | +14.6% | 好調継続 |
出典:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年1月推計値)」
中国依存型ビジネスモデルの光と影
中国人観光客を主要ターゲットにすることには、明確なメリットがある一方で、今回表面化したリスクも存在します。
メリット
- 春節・国慶節など連休期間に大量集客が見込める
- 団体ツアーで客室稼働率を一気に高められる
- 言語・対応を絞ることでオペレーションを標準化しやすい
- コロナ明け以降、需要回復が急速だった
デメリット(リスク)
- 政治・外交の影響を直撃で受ける
- 渡航自粛1つで売上が一晩で消える脆弱性
- 日本人客や他国客を長年疎外した結果、戻すのが困難
- 施設老朽化・設備投資の遅れにつながりやすい
読者の声から見える本質
今回の件に関するYahooニュースのコメント欄(5,628件)には、多くの視点が集まっています。注目すべき意見を整理しました。
脱中国依存に向けた対策チェックリスト
すでに動き出している事業者の取り組みをまとめました。観光業に関わる方の参考にしてください。
- インバウンド事業部の新設・多国籍営業 ― ロイヤルホテル(大阪)は2024年にインバウンド事業部を設置し、10か国以上の旅行代理店へ直接営業。台湾・韓国からの集客が増加し、チャイナショックの影響を最小化。
- SNSプロモーションの強化 ― 欧米や東南アジア向けに英語・多言語でのSNS発信を強化し、認知度を高める。
- 国内日本人客の受け入れ態勢を整備 ― 「静かな環境」「日本語対応の丁寧なサービス」をPRし、以前は離れていた日本人客を呼び戻す。
- 施設の継続的な改装投資(CAPEX:建物・設備のリニューアル費用) ― 老朽化した設備は集客力低下につながる。需要があるうちに投資し続けることが長期的な体力に直結する。
- タイ・マレーシア・インドなどの代替市場開拓 ― 同じ春節連休を持ち、増加傾向にある東南アジア・南アジア市場を取り込む。
まとめ
中国政府の渡航自粛要請と春節の時期ずれが重なった2026年1月、特定1か国に依存してきたホテルは経営危機に直面した。その解決策は「集客先の多角化」以外にない。
- ▶ 原因:渡航自粛公告(2025年11月)+春節の時期ずれ(1月→2月)の2つが重複
- ▶ 影響:訪日中国人客60.7%減・全体4.9%減(JNTO推計値)、関西GRP最大約3,100億円押し下げ(日本総研試算)
- ▶ 対策:韓国・台湾・欧米豪など複数市場への分散と、国内日本人客の再取り込みが急務
- ▶ 読者行動:価格低下・混雑緩和を活用した旅行を検討しつつ、地域経済への長期影響にも目を向けて
注釈付き出典一覧
本記事で使用した主要数値の出典です。「推計値」は速報段階の数値で後日確定値に更新される場合があります。「試算」は仮定条件に基づく計算値で確定事実ではありません。
| 数値・情報 | 出典 | 種別 |
|---|---|---|
| 2026年1月 訪日中国人客 60.7%減・38万5,300人 | JNTO 訪日外客数(2026年1月推計値) | 推計値 |
| 2026年1月 訪日全体 4.9%減・359万7,500人 | JNTO 訪日外客数(2026年1月推計値) | 推計値 |
| 関西GRP押し下げ 約3,100億円(中国客半減時) | 日本総合研究所(読売新聞 2025年2月17日報道より) | 試算値 |
| 2026年の訪日客数が微減と予測 | JTB(日本経済新聞 2026年2月18日報道より) | 予測値 |
| 大阪・春節の中国個人客 約85%減(1,000室→150室) | 読売新聞 2026年2月17日報道(大手ホテル担当者談) | 報道値 |
| 大阪府内 2025年12月の中国人客 前年比45%減・17.6万人 | 大阪観光局推計(読売新聞 2026年2月17日報道より) | 推計値 |
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