南鳥島レアアース泥とは?日本初の深海6000m採取成功と商業化の課題【2026最新】
「日本には資源がない」―― これまで当たり前のように語られてきた常識が、今まさに覆されようとしています。約6000メートルの海の底から、日本の未来を変える可能性のある泥が吸い上げられました。2026年2月1日、日本の最東端・南鳥島の沖合で、世界最深クラスとなる深海約6000メートルからのレアアース泥の試験採取に成功したのです。
あなたのスマートフォンも、電気自動車も、風力発電も、すべてレアアースという特殊な金属なしには動きません。しかし現在、日本はその70%以上を中国からの輸入に頼っています。今回の成功は、あくまで実証試験の第一歩ですが、将来の選択肢を広げる重要な一歩となりました。
ただし、これは「すぐに日本で資源が採れる」という意味ではありません。商業化までには多くの技術的課題が残されています。
重要なお知らせ
この記事の情報は2026年2月5日時点のものです。レアアース泥の商業化スケジュールや採算性については、今後の技術開発や国際情勢により変更される可能性があります。最新情報は内閣府やJAMSTEC(海洋研究開発機構)の公式発表をご確認ください。
世界最深クラスの快挙!深海6000mからの採取成功
今回の試験採掘では、地球深部探査船「ちきゅう」が活躍しました。この船は、長さ約10メートルのパイプを約600本つなぎ合わせ、合計6000メートルもの深さまで到達させる技術を持っています。これは富士山の高さの1.5倍以上の深さから、細いストローで泥を吸い上げるような極めて精密な作業です。
海底に到達したパイプの先端には採鉱機という装置が取り付けられ、レアアースを多く含む泥をかき混ぜて船上に吸い上げました。この「揚泥管(ようでいかん)」と呼ばれる巨大なパイプシステムと水中ポンプ技術の組み合わせが、今回の技術的な突破口となったのです。
「採算が取れないこと、放射性物質の処理が問題なのであってレアアースなど陸上にも海底にもわんさかある。精錬過程で泥に含まれる微量のウラン、トリウムが濃縮されるリスクもあり、これらを中和・分離する技術開発も重要です。南鳥島に精錬施設を建設し、ミッドストリームの整備を進めることが課題ですね。」
「ちきゅう」ってどんな船?
探査船「ちきゅう」は、日本が誇る世界最高水準の深海探査船です。全長210メートル、船底から130メートルの高さを持つ巨大な掘削やぐら(デリック)が特徴で、30階建てのビルに匹敵する大きさです。1月12日に静岡県の清水港を出港し、2月15日に帰港する予定で、持ち帰った泥の詳細な分析が始まります。
分析中
今回採取した泥の成分・量
(2月15日帰港後に詳細分析予定)
※過去調査では有望な含有率を確認
約5700〜6000m
今回成功した採取深度
(報道により表記に幅あり)
※富士山より深い海底
70%以上
現在の中国依存度
(日本のレアアース輸入)
レアアースって何?なぜそんなに大切なの?
レアアースは、17種類の金属の総称で、私たちの暮らしに欠かせない「現代の産業のビタミン」です。電気自動車のモーター、スマートフォンの画面、風力発電機、さらには防衛装備品まで、ハイテク製品のほとんどにレアアースが使われています。
特に「重レアアース」と呼ばれるジスプロシウムやテルビウムは、高温でも磁力を維持できるため、電気自動車のモーターに不可欠です。過去の調査では、南鳥島周辺のレアアース泥に重レアアースが含まれている可能性が確認されていますが、今回採取した泥の詳細な成分分析は2月15日の帰港後に行われます。
なお、南鳥島は日本の排他的経済水域(EEZ:沿岸から約370kmまでの、魚や資源を自国で管理できる海域)内に位置しているため、国際的な許可なく開発できる点も大きなメリットです。
日常生活でレアアースが使われている例
- スマートフォン → 画面、バイブレーション機能、スピーカー
- 電気自動車 → 高性能モーター(ネオジム磁石)
- LED照明 → 明るく省エネな光源
- 風力発電 → 発電機の磁石部分
「EVシフトが世界的に加速する中で、高性能磁石に必要な重レアアースの確保は企業の死活問題です。もし南鳥島産のレアアースが安定供給されるようになれば、日本の製造業は資源リスクという重荷から解放されます。」
「資源の武器化」にどう立ち向かうか?高市政権が挑む経済安保の最前線
現在、世界のレアアース市場は中国がほぼ独占しています。生産量の約70%、精錬(加工)については91%が中国に集中しています(2024年時点の最新推計)。
| 区分 | 中国 | その他の国 |
|---|---|---|
| 埋蔵量シェア | 48.9%(4400万トン) | ブラジル23.3%、インド7.7%など |
| 生産量シェア | 69.2%(27万トン) | アメリカ11.5%、ミャンマー7.9%など |
| 精錬シェア | 91% | マレーシア4%、ベトナム1%など |
出典:USGS(米国地質調査所)Mineral Commodity Summaries 2025、IEA Global Critical Minerals Outlook 2025。数値は2024年時点の推計値であり、集計方法や年次により変動する可能性があります。
特に問題なのは、2025年12月に中国政府がレアアース磁石などを輸出許可申請の対象に追加したことです。これは、高市政権の台湾情勢に関する方針表明への対抗措置とも見られており、「資源の武器化」が現実のものとなっています。
この動きは、2010年の尖閣諸島問題の際に起きた「レアアースショック」を連想させ、日本の産業界に大きな危機感を与えています。単なる技術開発の問題ではなく、国家の生き残り戦略として、自国資源の確保が急務となっているのです。
過去の「レアアースショック」とは?
2010年、尖閣諸島沖での漁船衝突事件をきっかけに、中国が日本へのレアアース輸出を事実上停止しました。この出来事で、日本の製造業は大きな混乱に陥り、「資源を他国に依存する危険性」が浮き彫りになったのです。
南鳥島のレアアース泥、何がすごいの?
南鳥島周辺のレアアース泥については、東京大学とJAMSTECによる過去の調査(2010年代)で有望な資源の存在が示唆されてきました。今回の試験採取で得られた泥の詳細な成分分析はこれから行われますが、過去の調査結果からは以下のような特徴が報告されています。
メリット
- 日本の排他的経済水域(EEZ)内にあり、安全保障上有利
- 中国の陸上鉱山と比べて放射性物質(トリウム・ウラン)の含有量が極めて低く、精錬時の環境処理コストが大幅削減される可能性
- 過去調査では高性能磁石に必要な「重レアアース」(ジスプロシウム等)の存在が示唆されている
- 周辺海域に有望な資源が存在する可能性(具体的な埋蔵量は分析後に公表予定)
- 採掘技術が確立すれば、友好国への輸出も可能
次の挑戦(克服すべき課題)
- 採掘コストが現時点では中国産の数倍(大量生産による低減が目標)
- 商業生産まで10年以上かかる見込み(2027年の大規模実証試験が重要)
- 精製技術(泥から金属を分離・抽出する工程)が未実証―現時点では実用化技術が確立されていない
- 環境モニタリングと国際ルール整備が進行中(科学的評価は継続中)
- 南鳥島への精錬施設建設など、ミッドストリーム(中流工程)の整備が課題
「南鳥島のレアアース泥は、中国の陸上鉱山と比べて放射性物質(トリウムやウラン)の含有量が低いという大きな利点もあります。まさに質の高い資源が、日本の排他的経済水域内に眠っているのです。」
商業化への道のり:これから何が必要?
今回の回収成功は、あくまで「研究の第一歩」です。東京大学の岡部徹教授によると、実際の商業生産には10年以上かかると予想されています。
これからのスケジュール(計画段階)
- 2026年2月15日:「ちきゅう」が清水港に帰港、泥の成分分析開始(確定)
- 2027年2月(計画):1日350トン規模の本格的な実証試験を実施予定
- 2028年度以降(計画):産業化に向けた技術開発と採算性の検証
- 2030年代(予測):商業生産開始の可能性(技術開発が順調に進んだ場合)
※2027年以降のスケジュールは計画・予測段階であり、技術開発の進捗や予算措置により変更される可能性があります。
コストの壁をどう乗り越える?
最大の課題はコストです。深海からの採掘は技術的に困難で、中国産レアアースと比べて数倍のコストがかかると言われています。しかし、2027年2月に予定されている1日350トン規模の本格実証試験では、大量生産による「規模の経済」でコスト削減の可能性を検証します。
さらに重要なのは、中国産レアアースには放射性物質の処理コストが含まれるのに対し、南鳥島産はその負担が極めて小さいという環境優位性です。長期的には、この差がコスト競争力につながる可能性があります。
小野田紀美経済安全保障担当相は「国家を守るための視点を持った行動をしていくべきだ」と述べ、高コストを許容する姿勢を示しています。資源開発のために毎年1兆円規模の予算措置を検討していると報じられており、国家戦略としての覚悟が見えています。
「採算性の検討は重要だが、自国でレアアースを生産できる技術を持つこと自体に、経済安全保障上の意味がある。資源を把握し、採れる技術を確立する。緊急事態のための供給ルートを確保することが求められている。」
誤解を防ぐために:この発見は「すぐに採れる」わけではありません
今回の成功は画期的ですが、「明日から国産レアアースが使える」という意味ではありません。採掘システムの確立、精製技術の開発、環境影響の評価、そして国際ルールの整備など、商業化までには多くのステップが必要です。
また、「世界需要の数百年分」といった埋蔵量推定値は過去の調査に基づくものであり、今回採取した泥の詳細な成分分析結果が公表されるまでは確定値ではありません。実際の資源価値は、2月15日帰港後の分析を経て明らかになります。
しかし、技術的な実現可能性が証明されたことで、日本は「将来の選択肢を持つ国」として、資源外交における交渉力を確実に高めることができます。これこそが、今回の成果の真の価値なのです。
日米共同開発の可能性
今回のプロジェクトには、もう一つ重要な側面があります。それは日米共同での資源開発の検討です。アメリカも中国へのレアアース依存を減らしたいと考えており、日本の技術に大きな期待を寄せていると報じられています。
2026年3月の日米首脳会談では、今回の成功が議題になる可能性があり、両国の協力体制が具体化すれば、投資規模の拡大や商業化までの期間短縮につながる可能性もあります。ただし、具体的な協力体制や契約については現在検討段階であり、今後の動向が注目されます。
ポイントまとめ:押さえておきたい5つのこと
- 日本が世界で初めて深海6000mからレアアース泥の回収に成功
- 南鳥島周辺には世界需要の数百年分のレアアースが眠っている
- 現在、日本はレアアースの70%以上を中国から輸入している
- 商業生産までには10年以上かかる見込みだが、技術確立の意義は大きい
- 日米共同開発により、資源外交における日本の立場が強化される可能性
私たちの生活はどう変わる?
すぐに生活が変わるわけではありませんが、将来的には大きな影響が期待できます。
期待される変化
- 電気自動車や家電製品の安定供給 → レアアース不足による生産停止のリスクが減る
- 価格の安定化 → 供給源が増えることで、価格の乱高下が抑えられる
- 技術開発の加速 → 資源の心配なく、新技術の開発に集中できる
- 雇用の創出 → 採掘や精製の分野で新たな産業が生まれる
「10年掛かる、今の時点ではね。やってるうちに色々と分かってきて更に効率の良い方法が見つかるはず。10年後に物になれば世界が変わっている可能性もあり、そのときに武器になればそれで良いと思います。」
環境への配慮も忘れずに
海底資源の開発には、環境への影響を慎重に評価する必要があります。過去の試験(2022年茨城県沖)では、採掘後の海底に魚類が戻る様子が初期観察例として確認されましたが、本格的な科学的評価は現在も継続中です。今回の試験でも環境モニタリングシステムによるリアルタイム評価が実施されています。
国際海底機構(ISA)も日本の取り組みを「環境配慮型の実践例(environmentally sound practice)」として評価しており、今後の国際ルール作りにおいても、日本の技術と経験が重要な役割を果たすと期待されています。
まとめ:実証試験の成功と、これから始まる長い道のり
この成果は技術の記録であると同時に、国の覚悟の記録でもあります。今回の深海約6000mからのレアアース泥試験採取の成功は、「採取技術の実証」という第一歩を踏み出したことを意味します。しかし、これは商業生産の確定を意味するものではありません。
採取した泥の詳細な成分分析はこれからであり、精製技術の実用化、コスト削減、環境評価など、多くの課題が残されています。商業化までには10年以上かかる可能性が高く、その道のりは決して平坦ではありません。
それでも、この一歩があるからこそ、日本は「将来の選択肢を持つ国」として、資源外交における交渉力を高めることができます。私たちにできることは、過度な期待も悲観もせず、長期的な視点でこの取り組みを見守り、応援していくことです。
最新の開発状況は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)公式サイトおよび内閣府SIPのプレスリリースでご確認いただけます。
出典・参考資料
本記事は以下の信頼できる情報源に基づいて作成されています(2026年2月5日時点):
- JAMSTEC(海洋研究開発機構)プレスリリース(2026年2月2日)
- 内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)公式発表
- USGS Mineral Commodity Summaries 2025(米国地質調査所)
- 東京大学生産技術研究所岡部徹教授研究室報告書(2024年度)
- 国際海底機構(ISA)年次報告2025
- Nature Geoscience掲載論文(M. Kato et al., 2018)
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「たとえ10年かかろうが、それで蓄積できる海底の資源開発技術は、海洋国家である日本にとって、将来に渡り必ず役に立つ。日本が資源国になる。これが未来の日本です。」