ついに動いた!政府の本気度
女性トイレの行列問題、40年間放置された「当たり前の不平等」に終止符を
なぜ今まで誰も本気で解決しようとしなかったのでしょうか?
コンサート会場、映画館、駅のホーム…。女性だけが長蛇の列に並び、男性用トイレはガラガラ。この光景があまりにも「日常的」すぎて、多くの人が「仕方がないもの」として諦めていました。しかし、2025年7月中旬に国土交通省や経済産業省など関係府省が個別に、イベント主催者に向けた緊急通知を出すなど、ついに政府が重い腰を上げ、関係省庁が一斉に動き出しています。
データが物語る深刻な実態
中日本高速道路の調査によると、女性のトイレ利用時間は年々長くなっています。1983年に設定された基準では90秒とされていましたが、実際は2018年には117秒まで伸びています。これは単なる「女性の行動の変化」ではなく、社会構造の変化を反映した現象なのです。
女性の社会進出により、外出機会が増加し、トイレを利用する機会も増えています。しかし、トイレの設置基準は40年前のまま据え置かれていたのが現実でした。
なぜ女性だけが並ぶのか?隠された構造的問題
問題1:設置数の男女差
同じ面積でも、男性用は小便器を設置できるため、より多くの人が同時に利用可能です。女性用は全て個室のため、物理的に利用者数に限界があります。
問題2:利用時間の違い
女性は着脱に時間がかかる服装、生理用品の処理、化粧直しなど、男性よりも多くの行為を行う必要があります。これらは個人の選択ではなく、社会的な要請でもあるのです。
問題3:安全性への配慮不足
女性は安全面での懸念から、一人での利用を避ける傾向があり、友人と一緒に行くことで更に時間がかかる場合があります。
政府の緊急対策:3つの柱
対策1:設置数とエリアの見直し
男女で混雑の程度に差が生じないよう、バランスの取れた設置数や配置の工夫を要請。女性の利用特性を考慮した比率の見直しが始まります。
対策2:柔軟な一時転用
イベント時には、常設の男性用トイレを女性用に一時転用するなど、状況に応じた柔軟な対応を推進します。
対策3:情報提供による混雑緩和
リアルタイムの混雑状況案内や、事前の位置・規模情報の周知により、効率的な利用を促進します。
共用トイレという選択肢の光と影
行列問題の解決策として注目される男女共用トイレですが、実際の導入には様々な課題があります。最も象徴的な事例が新宿歌舞伎町タワーで起きた「ジェンダーレストイレ廃止事件」です。
女性37.7%
2023年4月に開業した東急歌舞伎町タワーでは、性別に関係なく使える「ジェンダーレストイレ」8室、女性用2室、男性用2室、多目的トイレ1室がコの字形に並ぶ設計でしたが、「化粧直しがしにくい」「男性に待ち伏せされたら怖い」といった声がSNSで相次ぎ、わずか4ヶ月で廃止されました。
歌舞伎町タワー事件が浮き彫りにした問題
設計の失敗:手洗い場が共用で、個室扉の前まで誰でも入れる構造
事前説明不足:利用者への十分な周知と理解促進が不十分
女性専用スペースの不足:実質的に女性用トイレが減少する結果
立地の問題:歌舞伎町という繁華街の特殊性への配慮不足
個人的には、男である僕は共用を気にしませんが、女性は男性との共用を嫌だと思います。これは偏見ではなく、現実的な安全への配慮と、社会的に形成された感覚の違いだと考えています。実際の調査でも、公共施設での共用トイレ利用に「抵抗がある」と答えた女性は37.7%で男性の28.6%より高く、別の調査では75.7%の女性が男女共用トイレ使用に抵抗感を示しています。女性の不安を軽視してはいけません。
イギリスの逆行と世界の潮流
一方で、世界的には興味深い動きが見られています。2022年7月、ジェンダー議論で日本の先を行くイギリス政府が「新しく建設する公的建造物は男女別のトイレを設けることを義務付ける」と発表しました。
「女性が安心できることは重要」「女性のニーズは尊重されるべき」 – ケミ・バデノック女性・平等担当相
イギリス政府は「ジェンダーニュートラル(性的に中立)なトイレ」が増えることについて「女性が不利益を被る」と考える人がいるほか、トイレを待つ列が長くなることも理由に挙げています。これは、まさに日本で起きている女性トイレの行列問題と同じ懸念です。
イギリスの政策転換の背景には、「小便器の横を通らないと個室に行けないのが嫌だと感じている女性は少なくない」という女性団体からの抗議があります。共用トイレでは男性は個室と小便器を使えますが、女性は個室のみとなり、実質的に利用できる設備が制限されるという問題があるのです。
スウェーデンの成功例と対照的な現実
一方で、スウェーデンでは共用トイレが当たり前となっています。その成功の背景には、社会全体の意識改革と、徹底した安全対策があります。
「トイレはトイレでしょという感覚。男女共用が当たり前で育つので」- ソフィア・ヤンベリさん(スウェーデン在住)
スウェーデンでは駅や空港、デパートなどほとんどの公共トイレでジェンダーレストイレが採用されており、男女別トイレはむしろ少数です。合理性や実用性を重んじるスウェーデンでは、「トイレはトイレ」「単なる排泄のための場所」という意識が強く、男女共用が当然とされています。
また、「女性は化粧をすべき」という意識も薄いため、手洗い場に大きな鏡がないことも少なくなく、日本とは社会的背景が大きく異なります。スウェーデンの成功要因は、完全個室化による安全性の確保、見通しの良い立地選択、そして社会全体での意識共有にあります。
しかし、これらの条件が揃わない限り、安易な共用化は逆効果となる可能性があります。実際、イギリスの政策転換は、理想と現実のギャップを象徴する出来事といえるでしょう。
注目すべき日本の先進事例
歌舞伎町タワーの失敗例がある一方で、日本国内でも成功している事例があります。
国際基督教大学:2020年に大学本館に従来の男女別トイレを残しつつ、オールジェンダートイレを併設。選択肢を提供する方式で成功
渋谷ソラスタ:最上階に多機能トイレ・女性専用トイレ・オールジェンダートイレを配置。利用者が使用したいトイレを選択できる設計
成田国際空港:男性用・女性用のトイレとしても利用可能なオールジェンダートイレを設置。子供用トイレや多機能トイレも併設
これらの成功事例に共通するのは、既存の男女別トイレを残しながら、追加の選択肢としてオールジェンダートイレを設置している点です。歌舞伎町タワーのように女性用トイレを実質的に減らすのではなく、選択肢を増やすアプローチが重要なのです。
変化の始まり、そして私たちにできること
40年間放置されてきた女性トイレの行列問題に、ついに政府が本格的に取り組み始めました。しかし、真の解決には時間がかかります。
私たち一人ひとりができることは、この問題を「当たり前」として受け入れるのではなく、改善を求める声を上げ続けることです。
平等で快適な社会は、小さな「不平等」を見過ごさない意識から始まるのです。
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